鬼の話その二

鬼といえば頭にツノ、きているのは虎のパンツ、というのがセオリーですよね。
こんなのとか。
これは鬼門が「艮」、つまり「丑寅」の方角にあることに由来しています。

つまり陰陽道がもとになっているわけですが、日本に陰陽道が伝わる以前から鬼は日本に住んでいたようです。

日本史上、最も古い記述に登場する鬼は、「出雲風土記」にある「目一ツの鬼」と言われています。
笹の葉の音や鬼に食われた奴の断末魔が「動動(アヨアヨ)」(?!)だったので、この地が阿用郷と呼ばれるようになった、
と言うだけの話ですが、ここでは「目が一つ」ということで、「鬼」が異界の存在であることを示しています。

なぜ一つ目が異界の象徴となるのでしょうか。
「播磨風土記」に、「天目一命」(あまのまひとつのみこと)という鍛冶神についての記述があります。
山に住むタタラ師、つまり産鉄民は、炎を見続けることから片目がつぶれ、ふいごを踏み続けることから片足が駄目になる、といわれていました。
つまり「一つ目」は「タタラ」の象徴であったわけです。
タタラは砂鉄から鋼を錬成する能力、即ち金属精製の技術を持っていました。これは一種の超能力、つまりは「異界に繋がる能力」であり、タタラはシャーマンとしての側面も持っていたようです。

更に山には「土蜘蛛」や「国巣」などの「山人」や、忍者のルーツと言われる「山窩」、さらにはマタギ(猟師)や修験者など、人間社会のコミュニティーからはみ出たモノ達が住んでいました。
「里のおきて」に対する「山のおきて」、「里ことば」に対する「山ことば」など、「山のコミュニティー」が徐々に形成されていったのです。

昔は山にハイキングコースなんかありませんでした。「山」は里の人間にとって、神仏や魔怪の住む異界と認識されていたのです。
これを「山中他界観」と言います。