“鬼”の話その1

今日は「立春」。暦の上では本日より春となります。
春になったはずなのにまだ寒いのは、これが旧暦(太陰太陽暦)によるものだからで、現行の新暦グレゴリオ暦)とは、だいたい一ヶ月前後のズレがあります。

昨日は節分でしたが、みなさん豆まきしましたか?
季節の変わり目には鬼、つまり邪気が強くなるので、豆のちからで、病気を退けよう。というのが豆まきの趣旨ですが、これは豆や米などの穀物を撒いて邪気を祓う「打ち撒き」と呼ばれる呪術の一種で、「追儺」(おにやらい)という儀式の一種といえます。
浅草寺の古式追儺式では、参道を走り抜ける鬼の姿を見ることが出来ます。
ここでいう「鬼」とはつまり邪気や瘴気、病気などを擬人化したモノを指しますが、他にはどういったものを「鬼」と呼ぶのでしょうか。
辞書で「鬼」の項を引いてみますと、大体次のような意味に分けられます。

(1)死者・霊魂(2)鬼神・悪神(3)妖怪・ばけもの

なるほどどれも「鬼」と呼ぶことが出来ます。
他には気性の激しい人や厳しいを「仕事の鬼」とか「鬼コーチ」と呼びますね。
欧州では同じような意味で「仕事のデーモン」とか「デーモン職人」といった言葉を使うことがあります。現在でこそ「デーモン」は「悪魔」という意味がありますが、もともとは神や精霊をさす言葉で、日本語の「カミ」と近い意味を持っていました。
日本語の「オニ」ももともと「不可視のもの」を表す言葉と言われていますから、「カミ」と同じような意味であったと考えられます。
「鬼」という漢字は、現在でも「鬼籍に入る」という様に、死者の霊魂という意味を持っています。
そして「類聚名義抄」では「神」と言う字に、「カミ」のほかに「タマシヒ」「オニ」という訓が当てられていることからも、オニとカミが近しい言葉であることがわかります。
他には「モノ」というのも同じ意味で、神や霊魂をさす言葉です。「鬼」をモノと訓む文書も散見できます。
だから祭祀を司る一族を「物部氏」(神霊を司る)と呼んだわけです。